これが解けるか!

Can this be solved!

これが解けるか!

炭酸カルシウム3(侵食)

 説明したついでに実際に手を動かして実験する経験をしてもらうことにしよう。

「そういえばチョークの主成分は炭酸カルシウムだったな。あれを水に浸したことはあるかい」

「いえ、ないです」

「せっかくだし、どうなるか試してみようか」

 そういって私は白いチョークとコップとアルミ製のスプーンを持ってくる。コップの中には水が入っている。フィルタでろ過しているので、ミネラル分は水道水よりは少ないはずだ。

 白いチョークをコップの中に入れる。しばらく二人で様子を観察する。

「溶けないですね」

「そうだね。混ぜてみてくれないか」

 生徒ははい、と頷きながら返事をして、スプーンでコップの中身をかきまぜた。

「やっぱり溶けませんね」

「そうだね。目で見る限りでは溶けているとは思えないね。でも、たぶん、ほんの少し、さっき話した程度の量ではあるけど、溶けているはずだよ」

 そうなんですね、と彼が言う。もちろん私の目には溶けているという事実が見えているというわけではない。事実としてそういう風に考えることが妥当だということを知っているからそう断言できるだけであって、目に見えてわかっているわけではない。目に見えなくても理解したり分析したりできること、これも知恵であり賢さなのだろうと思う。

「炭酸カルシウムは本当に水にはほとんど溶けないんですね」

「そうなんだよ」

「でも、少しは溶けるんですよね」

「ああ」

「じゃあ、100 gの炭酸カルシウムでできた岩石を水にさらし続けたら、いつかは水に溶けてなくなってしまうのでしょうか」

 よし、いいきっかけが来た。

「面白い質問だね。それについては私も明言することはできないが、一緒に考えてみよう。これは平たくいえば炭酸カルシウムを水に溶かす実験ということができるね。じゃあ、まず何をすべきだろう」

 生徒は一瞬考え込んだ。

「ええと、水に溶かす実験だから、まず炭酸カルシウムの水に対する溶解度を調べる必要がありそうですね」

「そうだね。調べてみてくれないか」

「わかりました。ええと、炭酸カルシウムは298K(セ氏25度)の水1リットルに約0.00015 mol溶けるようです。つまり、0.00015×100=0.015 g溶けるということですね。かなりたくさんの水が必要になりそうですね」

「そのようだね。ええと、少し待ってくれないか」

 私は手元のパソコンをタイプした。生徒はその様子を不思議そうに眺めている。

 しばらくすると私は作成した文章をプリントアウトして生徒に手渡した。

「この課題、来週までにレポートにまとめて私に提出してみないかい」

 生徒の顔が若干ひきつっている。しかたない、一応フォローしておくか。

「大丈夫、できなくたっておとがめはないよ。せっかくの機会だから、自分で考察することと、その内容をまとめ上げて記述することの練習をしてみたらどうかなと思ったんだ。わからないことがあれば質問に来てくれてもいいし、メールで質問を送信してくれても構わないよ。」

 生徒は困ったなあ、という表情をしていたが、やがて、はい、と小さな声で返事をした。

「質問してしまうと、いつまで経っても課題が減らなそうですけどね」

 おお、なかなか鋭いことを。全くもってその通りだ。学びのきっかけを渡すチャンスがあればいつでもねじ込むつもりだからな。さて、彼がどんなレポートを提出してくれるのか楽しみだ。

【問】

○100 gの炭酸カルシウムを水に溶かしきるにはセ氏25度の水が何立方メートル必要と考えられるか。

○チョークを浸した水の中に実際に炭酸カルシウムが溶け込んでいることを検出・証明するためにはどのような実験をすればよいか。その内容とそう考える理由を述べなさい。

○酸性雨にさらされると、炭酸カルシウムはより早く侵食される。その理由を簡潔に説明しなさい。また、より早く侵食を進めるためにはどんな条件にすればよいだろうか。

○ミネラルウォーターのミネラルとは鉱物という意味であり、水の中に鉱物が溶け込んでいるものをミネラルウォーターという。ミネラルウォーターができる過程について説明しなさい。